今回も読んでいただき、ありがとうございます!
化粧をしている高齢者って元気な人が多い印象がありませんか?
これは病院勤務だったころの経験談ですが、
退院数週間後…

ひさしぶりに遊びに来たよ!
元気にやってるよ!
と、化粧をされ見違えるように元気になった姿で遊びにきてくれる患者様が、たくさんいました。
そこで化粧の力について興味を持つようになりました。
今回、調べていく中でこんなことが分かりました。
- 化粧をしている=社会とのつながりが多い
- 化粧をつづける=フレイル予防につながる
【この記事を書いた人】

ありこ Twitter @arichan3120
- 作業療法士(回復期→2019年~訪問看護)
- メイクセラピスト→2級を目指して日々勉強中
- 好きなラーメンは家系
フレイルとは

フレイルとは厚生労働省により、”加齢とともに、心身の活力(例えば筋力や認知機能など)が低下し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの危険性が高くなった状態“とされています。
そのまま進行すれば、要介護状態になってしまいます。一方、適切な介入をすれば、健康状態に戻る可能性もあります。

- 身体的フレイル:低栄養、転倒の増加、口腔機能の低下
- 社会的フレイル:閉じこもり、困窮など
- 精神的フレイル:うつや認知機能低下
このような様々な要因により、フレイルが生じるとされています。
高齢者と化粧
高齢者の化粧の頻度は減っていく

- C=スキンケアもメイクもしている
- M+=メイクのみしている
- S+=スキンケアのみしている
- CO=化粧をやめてしまった
健常高齢者のほとんどが、スキンケア・メイクどちらも続けている結果になっています。仕事や休日にお出かけをするわたしたちは、ほぼ毎日化粧やスキンケアをする機会があります。しかし、高齢者になると”時々”と答える人が4割ほどとなっています。
今回の調査の中で、メーキャップを時々すると回答した者に実施する状況を尋ねたところ、外出する時や人と会う時と回答する者がほとんどであった。
引用元:池山(2013)p.12
高齢になると友人とのつながり、外出機会が減ってしまう=社会とのつながりが減ってしまうことが多いです。この文献から、化粧をしている=社会とのつながりが多くあることがいえると考えます。
化粧をする=対人積極性があがる
化粧をしている日・髪の毛がうまくきまった日は気分も上がりますよね。
わたしは化粧をすることで、休日も外に出よう!という気分になり、一日が充実します。反対に化粧をしていない日は、外に出ることをためらったり、外に出たとしても、なんとなく人の顔を見ることができないことがあります。
18-44歳の女性500名を対象に、化粧の効用的意識を調査し、対象者の約半数が「化粧をしているときは人に対して積極的になれる」と回答した。
岩男ら(1985)
女子大学生22名にノーメイク、ヘビーメイク、ナチュラルメイクのタイプの異なる化粧を施したあと、発話文字数を測定したところ、ナチュラルメイク条件で最も多く、次いでヘビーメイク条件となり、ノーメイク条件では最も発話文字数が少なかった
大坊(1995)
高齢者も外に出るから化粧をするだけでなく、化粧をするから外に出る・人と関わりたい気持ちがわくものだと思います。化粧を継続していく習慣は、大切にしたいですね。
化粧を続けることは、フレイル予防につながる!

高齢になり、心身機能が落ち、外出頻度が減っていく。人との交流も減り、と自分や他人への関心もなくなり、「もう歳だから…」化粧や身なりを気にすることが減る。そのせいで、さらに外出頻度が減る。このような負のサイクルから社会とのつながりも減少し、フレイル状態に陥ります。
反対にいえば、化粧を続けることができれば、社会とのつながりを維持することができる=フレイル予防につながっていく可能性があることが考えられます。
- 要介護状態へ移行しないように、負のサイクルから抜け出すことが必要
- 化粧はその1つのきっかけになる

リハビリから見た【化粧】の位置づけ
FIMー整容項目のうちの1つ

化粧はFIMのセルフケア:整容項目に分類されます。
- 口腔ケア
- 整髪
- 手洗い
- 洗顔
- 髭剃り、または化粧
髭剃りと化粧が必要ない場合は、その他の4項目で評価することとなっています。
実際の現場では
正直なところ、病院に勤めていたころは、化粧に対して積極的に評価をしたことはありませんでした。
“化粧ができない=生活が成り立たないわけではない“
ということもあり、その他のADLばかりに目が向いてしまっていました。しかし、化粧がフレイルを予防し、健康寿命をのばすことにつながるのであればどうでしょう?評価、アプローチする価値があると思いませんか?
たとえば、

入院する前、お化粧をする習慣はありましたか?
この問いかけ1つからでも、日常生活での活動量をはかる1つの目安になると考えます。
まとめ
- 高齢になるほど、化粧をする機会が減っていく
- 外に出るから化粧をするだけでなく、化粧をするから外に出たい気持ちがわく
- 化粧をする習慣を続けることで、フレイルを予防できる可能性がある
- セルフケアの1つとして評価をしていく意義はある

今回も読んでいただきありがとうございました!
化粧療法についてもっと詳しく知りたい人は
参考文献
- 池山和幸:「香粧品と高齢女性の行動変容」. 『オレオサイエンス』. 2013, Vol.13,No.1, p.11-13.
- 岩男寿美子ら:「化粧の心理的効用Ⅳ:化粧行動と化粧意識」,『日本社会心理学会第26回大会発表論文集』,1985,p101-103.
- 大坊郁夫:「化粧行動と自己意識」,『感情心理学研究』,1995,Vol3,35.
- 鈴木公啓:『装いの心理学 整え飾るこころと行動』,北大路書房,2020.
- 池山和幸:『「粧う」ことで健康寿命を伸ばす化粧療法』, クインデッセンス出版株式会社,2019.
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